レーザマーキング対応プラスチック

レーザマーキングは、プラスチックがレーザビームのエネルギーを吸収して発色する非接触マーキングシステムです。マーキング性能は、プラスチックの種類、含まれる顔料、レーザの種類に大きく左右されます。また、プラスチック部品の形状によって、使用されるレーザや必要なエネルギーは異なってきます。

一般的に多くの熱可塑性プラスチックはレーザマーキングに対応していますが、たとえマーキング性が悪い場合でも、添加剤やマスターバッチを配合することで改善することができます。 特に顔料の種類を変えることで、レーザマーキング性は向上します。

レーザマーキングのメリット

レーザマーキングは高い信頼性と多くの利点により、さまざまな産業分野で使用されています。 一度レーザを照射するだけで視認性の高い部品が得られ、また偽造防止にも役立ちます。

従来のマーキング技術と比較して、レーザマーキングの利点は次の通りです。

  • 半永久的な信頼性の高いマーキング:耐水性、耐摩耗性、耐熱性、耐光性、耐薬品性
  • マーキングデザインの幅広い柔軟性:従来の接触マーキングでは不可能であった部分へのマーキング対応
  • 非接触マーキング:
    - 物理的な接触がないためツールへの摩耗や裂傷がなく、化学薬品やインクなどの消耗品の費用は発生しません
    - プラスチックへの圧力や負荷が発生しないため、一貫したマーキング品質が確保されます
  • 色の変化のみでプラスチック本来の性能はそのまま維持
  • 取扱いが容易かつ使用前後の処理は不要
 

レーザマーカーの種類

レーザマーカーを使用してプラスチックにビームを照射すると、その表面は変化します。様々な種類のレーザーがあり、それぞれレーザ生成のメカニズムは異なります。レーザを大別すると、固体、液体、気体に分類されます。 レーザの種類だけでなく、使用する波長によってレーザマーキングの効果は異なります。固体レーザのYAGレーザ(Nd:YAG)、ファイバレーザー、CO2レーザは理想的です。エンズィンガーではその中でも一般的によく使用されるYAGレーザ(Nd:YAG)と基本波長:1064nmを用いて評価しています。
※YAGレーザ(Nd:YAG)はY(イットリウム)、A(アルミニウム)、G(ガーネット)にNd(ネオジウム)をドーピングし、その結晶から発光したものです。

使用分野

レーザマーキングはその優れた特性により、従来のマーキング方法から置き換えられています。プラスチックのラベリングにおいて、レーザマーキングは確立された方法です。識別のためバーコード、製品名、型番などが印字されますが、品質保証とトレーサビリティの観点からもマーキングの重要性はますます増加しています。 医療や食品のみならず、多くの業界でこの技術は採用されています。

使用例:

  • プラスチック製のケース
  • 電子部品
  • 自動車部品向け回路基板
  • ツールとツールハンドル

レーザマーキングに最適化された特殊POM樹脂グレード

すべての高機能プラスチックがレーザマーキング可能なわけではありません。 例えば、POM樹脂(アセタール)およびPA樹脂(ポリアミド、ナイロン)では、通常、YAGレーザ(Nd:YAG)を照射しても変色しません。 エンズィンガーでは、

など、レーザマーキングに適用したプラスチック素材を提供しています。特にTECAFORM AH LM whiteはレーザ向けの特殊添加剤を配合しているため、発色性が最も良好です。

TECAFORM AH LM white

レーザーマーキング対応可能なポリアセタール・コポリマー(POM-C)素材です。小型部品にも小さな文字で高コントラストに刻印できます。

TECASON P MT black

生体適合性の医療用黒色PPSU素材です。24時間以内の生体接触が可能です。