PAI - ポリアミドイミド

エンズィンガーのTECAPAI (Solvay社 Torlon®使用)

Torlon® PAIは 熱可塑性樹脂の中で最高峰のパフォーマンスを有するスーパーエンプラです。
 
非晶性の熱可塑性樹脂であるPAI樹脂(ポリアミドイミド)は、熱安定性、耐薬品性、非常に優れたトライボロジー性、摺動性、耐摩耗性の特徴があります。これらの特性は275℃までにおいて高いレベルを維持します。エンズィンガーでは切削加工用素材として押出成形および圧縮成形にてTECAPAIを製造、販売しています。
 
PAIは非常に高い引張強度と圧縮強度を示します。また、靭性や剛性も合わせ持っています。トーロン®PAIの低線膨張係数と熱安定性の特性は寸法安定性に寄与し、アルミ、ステンレス、炭素鋼と同程度の線膨張係数により、金属代替として使用できます。

フィラー配合の強化PAI、例えば炭素繊維やガラス繊維入りのPAIは強度と剛性が向上しています。160MPaを超える引張強度、280℃を超える荷重たわみ温度など、熱可塑性樹脂の中で最高の特性を誇ります。

PTFEやグラファイトを配合した摺動PAIグレードは、低摩擦で耐摩耗、ドライ環境においても優れたトライボロジー性からベアリング部品に使用されています。200℃以上の過酷な温度環境や、常温でも高摺動により発生する摩擦熱、圧縮応力への変形などに耐えることができます。

Torlon®PAIは、ソルベイグループの登録商標です。

PAI樹脂の特徴

  • 優れた摺動性、耐摩耗性
  • 高い引張強度(120MPa以上)、高い圧縮強度
  • 高温下でも優れた強度と剛性を保持
  • 優れた熱安定性
  • 荷重たわみ温度(278℃)
    ガラス転移点(285℃)
  • 低熱線膨張係数
    (アルミ、ステンレス、炭素鋼と同等レベル)
  • 非常に優れた耐衝撃性
  • 優れた切削加工性
  • 耐薬品性

PAI素材のグレードバリエーション

エンズィンガーではトーロン® PAIを使用した押出成形および圧縮成形素材を販売しております。
それぞれ以下の特徴があります。
 
  • 押出成形素材:大型サイズに対応するコストメリット
    (※準備中。近日公開予定。お問い合わせは 
    こちらから。)
  • 圧縮成形:1個から対応のメリット
    (受注生産品になりますが短納期で対応しております。まずは無償サンプルを こちらから ご依頼ください。)

圧縮成形PAI(板材、チューブ、丸棒)

TECAPAI CM XP403 green

Solvay Torlon®を使用したPAI素材です。PEEKやPIを超える強度、260℃の耐熱性、耐摩耗性や耐薬品性など各種特性に優れます。アルミ並みの線膨張係数により金属代替に最適です。

TECAPAI CM XP730 black

Solvay Torlon®PAIに炭素繊維を30%配合した強化PAI素材です。剛性とクリープ強度が高くなっています。炭素鋼と同等レベルの低線膨張係数により金属代替に最適です。

よくあるご質問:PAI樹脂とpeek樹脂のそれぞれの特徴、特性の違いとは? 

PAI樹脂もPEEK樹脂も200℃以上で使用できるプラスチックですが、特性が異なります。
 
  • 強度、耐熱性・耐寒性、耐薬品性の比較
    PAIとPEEKの標準グレードを比較すると、PAIのほうが引張強度に優れ、120MPa以上と高いです。PAI樹脂のTECAPAIは、260℃の高温から-196℃の極低温に対応している特徴があります。PEEK樹脂のTECAPEEKは幅広い種類の薬品に対する耐性に優れています。
    靭性と耐衝撃性についてはPAIのほうが優れています。荷重たわみ温度はPAIは278℃、PEEKは152℃と大きな違いがあります。

  • 摺動性:ベアリング向け摺動グレードでの比較
    例えば、軸受材料、ボールベアリングのリテーナー(保持器)として、PAI、PEEK、どちらも耐摩耗性と摺動性のある摺動グレードが使用されています。ベアリングやシール材には圧縮強度と高硬度も必要とされます。PAIはPEEKを超える高いPV値と優れたトライボロジー特性により、より過酷な環境で使用できます。150℃以上の温度で使用される際はPAIのほうが寸法安定性と強度に優れます。PEEKのガラス転移点は143℃のため、150℃以上では寸法変化が大きくなり、また剛性は低下し始めます。

  • 吸水性、寸法安定性の比較
    PEEKのほうが吸水性は低いです。150℃以下ではPEEKのほうが優れ、150℃以上の温度においては、靭性、熱線膨張係数の違いによりPAIのほうが優れます。PAIは飽和水蒸気、強塩基へは影響を受ける可能性があるので注意が必要です。

  • PAIとPEEKのどちらを選択するべきか?
    どちらも素晴らしい性能を発揮しますが、以下の違いになります。
    • PAI樹脂:200℃以上の環境で摺動、強度、熱安定性、金属と同等の寸法安定性が必要な用途。PEEKよりも靭性に優れる。
    • PEEK樹脂:150℃までの寸法安定性、強度と耐薬品性、豊富なサイズバリエーションとコストに優れる。PAIよりも延性と衝撃強度に優れる。

PAIの切削加工性について

TECAPAIは強度と剛性の高い素材ですが、他のプラスチックと同様にCNC切削加工が可能です。PAI(ポリアミド)を切削加工する際、主に超硬工具が使用されますが、微細加工やフィラー入りグレードの切削する際はPCD(多結晶ダイヤモンド)が使用されます。工具寿命を延ばし、表面仕上げを最小化するため、脂肪族系、水溶性切削油が使用されます。 


微細加工に対応したテストソケット向け素材:TECAPAI CM XP530 black-green

ガラス繊維30%を含む圧縮成形グレードのTECAPAI CM XP530 black-greenは、 押出成形グレードよりも内部応力が低く、寸法安定性に優れた特徴があります。また、最適な繊維配合により微細加工に対応しており、剛性の高い他の素材よりも安定性に優れます。素材の特性である高弾性率と高強度の点から、半導体製造プロセスにおけるテストソケットに採用されています。



PAI樹脂の主な使用用途

半導体製造装置: テストソケット、 コネクター、インシュレーター
航空宇宙: ファスナー、インシュレーター
石油ガス: 天然ガス向けコンプレッサー部品、ポンプ部品、ラビリンスシール
摺動部品: ベアリング、耐摩耗部品 (要求特性:高摺動性、高強度、高剛性)