導電性・帯電防止性(ESD)プラスチック

製品の高精細化と高機能化に伴い、心臓部となる電子部品を使う工程治具、検査治具、生産設備には、高いレベルの導電性能、帯電防止性能が求められます。半導体製造分野において、大型のFPDガラス基盤やシリコンウェーハーの搬送では、わずかな摩擦により生じた静電気、生産工程中に発生した静電気を除去する必要があります。

一般的にプラスチックは電気絶縁性を示しますが、PEEKやPOMなどのプラスチックにフィラーを配合することで、導電性、帯電防止性(ESD)といった様々な特性を発揮することができます。電気特性が要求される場合、電気絶縁性、帯電防止性(ESD)、導電性のどれかが必要になります。エンズィンガーの幅広いグレード郡から、最適な素材を選定することができます。
 


エンズィンガー素材の特徴とメリット

 
  • 微細領域でも均一な電気特性を発揮するグレード郡
  • サイズバリエーションが豊富
  • 優れた切削加工性、寸法精度を有する


表面電気抵抗と体積固有抵抗

プラスチックの導電性を表すのに、表面電気抵抗や体積固有抵抗が利用されます。

表面電気抵抗
プラスチック表面を流れる電流の流れにくさのことです。試験片に電圧をかけ(印加して)、流れる電流を測定し、オームの法則から抵抗値を求めることができます。表面電気抵抗値は、単位をΩとして表記します。測定の際には、標準化された試験条件を適用する必要があります。表面電気抵抗は、以下の要因に大きく依存します。

  • プラスチックの材質
  • 湿度
  • 表面の汚染
  • 測定方法(電極の形状・材質など)
    注:測定された表面電気抵抗から、計算により体積抵抗を求めることはできません。

体積固有抵抗
体積固有抵抗(体積抵抗率)は、均一なプラスチック素材の断面を通過する電流の流れにくさを表したものです。ほとんどの素材の電気抵抗は印加電圧には関係なく、オームの法則に従い、断面積に反比例し、長さに比例します。プラスチックも同様です。したがって、体積固有抵抗の単位は、Ω・cmになります。



導電性・帯電防止性(ESD)プラスチックの範囲

高精度で高感度な電子部品を適切に取り扱うには、ディケイタイム(除電に要する減衰時間decay time)を制御した静電気拡散性素材を用いることが重要となります。
用途にあわせて、右図にあるような電気抵抗値:106-12ΩのESDや、電気抵抗値:102-4Ωの導電性素(ELS)の中から選択することで、製造中の部品へのダメージと損傷を大幅に低減することが可能になります。電気・電子、半導体業界からのこれらの要求を満たすため、エンズィンガーは新しいESDおよび導電性プラスチックのラインナップを拡充しました。

帯電防止性(ESD)プラスチック

帯電を回避し静電気放電(ESD)から保護するために使用されます。電気抵抗値は106-12Ωの素材です。電気的に非常に敏感な部品を取り扱う場合、製造工程において部品へのダメージや破壊を大幅に低下させることができます。新素材のTECAPEEK SD blackであれば帯電を防止することができます。導電性ポリマー配合のTECAFORM AH SD naturalも有効です。
一般工業分野においてもコンベア用途や防爆用途で使用されています。帯電を防止することで爆発性の放電を回避することができます。 

TECAPEEK SD black

表面抵抗率が106~109 Ωの帯電防止性PEEK素材です。半導体、電気・電子用途に最適です。半導体製造のテストソケットに使用可能です。

TECAFORM AH SD natural

帯電防止剤を配合した表面抵抗率1011Ωの帯電防止性POM-C素材です。耐摩耗性、耐薬品性、靱性に優れます。半導体、電気・電子用途に最適です。
帯電防止性(ESD)プラスチックの板材、丸棒を幅広く取り揃えております。以下は素材例になります。

導電性プラスチック

CNT(カーボンナノチューブ)を少量添加させて、導電性を発現させた素材です。電気抵抗値は102-4Ωの素材です。切削加工性はフィラーなしの標準グレードとほぼ変わらず、寸法精度も良好です。

エンズィンガーの導電性TECAPEEK ELS nano black、さらに機械強度も向上させたTECAPEEK ELS CF30 blackは電子、自動車、再生可能エネルギーなどの幅広い用途での使用を可能にします。

注:機械強度向上を目的としたTECAPEEK CF30 blackや、摺動性向上を目的としたTECAPEEK PVX blackの電気特性は2次的な効果です。導電帯から電気絶縁帯までの幅広い電気特性を有するため、電気用途での使用は注意が必要です。

右の表は、左から以下のようになります。

  • 電気絶縁性:1012Ω以上
  • 帯電防止性:106-12Ω
  • 導電性:102-4Ω
  • 導電性(金属):102Ω以下

テクニカルワンポイント:CNTの分散
炭素繊維を添加しただけでは、炭素繊維の配向により導電性に偏りが生じてしまいます(高い部分と低い部分が現れます)。また、炭素繊維の弾性率が高いために素材全体の弾性率が高くなり、切削加工性が損なわれ高い寸法精度は期待できなくなります。さらには、炭素繊維の剥落や発塵によりクリーン環境を損なうリスクもあります。
近年、高い導電性能を示すカーボンナノチューブ(CNT)が注目されています。しかし、CNTは容易に凝集してしまうため、分散性の改善という技術課題がありました。分散性を改善することで、ごく少量のCNT添加で高い導電性を実現することが可能になり、ベース樹脂の特性をそのまま活かすことが可能になりました。 

TECAFORM AH ELS black

カーボン ブラックが添加されたこの押出POM-C は、102 ~ 104 Ω/sq の表面抵抗率をもって導電性を提供します。

TECAPEEK ELS nano black

カーボン ナノチューブが添加されたこの押出 PEEK は、表面抵抗率 102 ~ 104 Ω/sq の導電性を提供します。
導電性プラスチックの板材、丸棒を幅広く取り揃えております。以下は素材例になります。