プラスチックの熱特性は、素材の種類と使用環境によって左右されます。必要な耐熱性と耐久性を考慮して材料を選定する必要があります。
100℃から400℃を越える耐熱性まで、幅広い温度領域に対応。たとえ高温であっても高いレベルの物性を維持することができるため、半導体、医療、自動車などの様々な分野で使用されています。
150℃を越える高温環境で高い性能を示す素材をご用意。TECAPEEK(PEEK樹脂)であれば、長期耐熱温度:260℃、短期耐熱温度:300℃であり、高温使用に耐えることができます。
代表的な指標として、UL746Bによる相対温度指数(Relative Thermal Index;RTI)が用いられます。10万時間で一定の温度で大気中に暴露された場合に、初期の物性値が半減する一定の温度を指標としたものです。長期耐熱温度とプラスチックは以下に分類されます。
短期耐熱性
明確な定義はありませんが、通常、数分から場合によっては数時間の範囲を意味します。樹脂の物理的特性を保持できる上限温度を指すことが多く、形状を保持することが可能な温度、一定レベルの機械強度を保持する温度のことをいいます。
単なる形の保持が問題とされる場合は、以下の温度が目安となります。
応力がかかる場合は、以下が目安となります。
各素材の長期耐熱および短期耐熱温度は右の表にまとめております。
(long-term: 長期耐熱温度、short-term: 短期耐熱温度)
高温条件で使用する場合、ガラス転移温度(Tg)、結晶融解温度(Tm)などの特定の物理的特性が、機械的挙動と耐久性に大きく影響します。
ガラス転移点(Tg)
プラスチックを構成する高分子が、「ガラス」のように硬いが脆さのある状態から「水あめ」のように柔軟性がありゴム様の粘性を有する状態へと変化する温度のことをいいます。横軸に温度、縦軸にプラスチックの弾性率をとって、プラスチックの温度特性をプロットしたのが、次の二つのグラフです。左側が非晶性樹脂、右側が結晶性樹脂の例になります。
融点(Tm)
非晶性樹脂にはなく、結晶性樹脂のみにあります。氷が溶けて水になるように、物質が溶融する温度です。融点を超えると、結晶構造が壊れ、硬い固体の状態から液体の状態へと変化します。そのため、機械特性は一気に低下します。PEEK樹脂を例にとると、ガラス転移点(Tg):143℃、融点(Tm):343℃になります。
熱変形温度(荷重撓み温度)
熱変形温度(HDT)とは、温度変化に伴うプラスチックの対応能力を示すもので、荷重撓み温度(DTUL)ともいいます。熱変形温度とは、一定の曲げストレスを与えた状態で温度を上昇させたときに変形量が一定レベルを超える温度のことです。熱変形温度は、プラスチック素材そのものを特徴づけるものではありませんが、プラスチック素材間の比較のために用いられることの多い指標です。
熱変形温度を考慮する際には、プラスチック製品・部品の加工方法に留意する必要があります。なぜならば、射出成形で試験片を作成して得られた値と、切削加工用の押出成形品から切削加工した試験片の間で値が異なるからです。
一般的に以下の理由によるものとして、説明されています。
線膨張係数(CLTE)
線膨張係数とは、温度の上昇あるいは下降といった温度変化に伴う物質の膨張・収縮を、試験片の長さの変化を測定することで求める値です。
プラスチックは、その化学構造に起因して、金属よりもはるかに大きな線膨張係数を有します。線膨張係数は、以下の場合に考慮する必要があります。
プラスチックの線膨張係数は、ガラス繊維や炭素繊維の繊維状強化剤を添加することで大きく低下させることができます。この方法を選択することで、アルミニウム程度の線膨張係数に近づけることができます。
結晶性、非晶性プラスチックのどちらにおいても、0℃以下における使用温度には明確な定義はありません。主にアプリケーション要件に大きく依存するため、実際に試験を行って確認する必要があります。しかしながら、エンズィンガーの長年の知見から各素材の耐寒温度を見積り、耐熱性とあわせて上記表にまとめております。
使用中に発生する応力負荷の種類、例えば衝撃や振動によって耐性は異なってきます。繊維強化素材は、より脆弱な挙動を示す傾向があります。従って、補強材による強化は低温ではより厳しく評価する必要があります。
耐寒性プラスチック:
マイナス200℃以下の極低温下では、ごく一部の素材、例えばPI、PE、PTFEしか使えません。以下のプラスチックは、マイナス50℃以下に対応した素材です。