水星探査BepiColombo
このミッションは、水星表面探査機(MPO)と水星磁気圏探査機(MMO)という2機の宇宙船から構成されます。BepiColomboはESAと日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)による合同ミッションで、ESAの主導で行なわれます。
過酷な環境に耐えぬく
このミッションにおいて熱制御システム(TCS)が使用されます。TCSは宇宙船コンポーネントシステムをあらゆる場面で一定の温度範囲に保持する重要な機能です。宇宙船は宇宙空間や太陽や惑星の放射に晒されるため、TCSは時に激変する温度環境に対応しなければなりません。宇宙空間に突入する際に宇宙船が発生する熱は高温であり、それにも耐えなければなりません。
極度の高温や低温に晒されると、部品は損傷したり性能が大きく損なわれたりする恐れがあるため、ミッションを成功させる上で熱制御が必要です。光学センサーや原子時計などの部品を安定して機能させるため、適切な温度範囲に維持することが重要になります。
TCS部品の1つに熱スペーサーがあります。高温や放射線に対するバリアーとして機能するリング状の部品です。熱スペーサーは高温でも応力負荷に耐え、変形が起きないよう高いクリープ耐性を発揮しなければなりません。この特性も7年間維持されなければなりません。
高レベルの強度と耐熱性―TECASINT 1011
宇宙産業向けの特殊な熱スペーサーという用途のため承認までの道のりは長く、徹底した試験が行われました。
まず、ポリイミドのTECASINT 1011は350℃でも溶融したり軟化しないため、熱スペーサーの候補素材となりました。この素材は応力負荷を受けても変形しにくく、非常に優れたクリープ耐性を特徴とします。最長7年におよぶ宇宙船のフライトの中で、ネジの大きな締め付け力を保持する特性は最も重要でした。最終的に、Astrium社とAirbus Defence and Space社による5年間の試験にTECASINT 1011はクリアし、スペーサーとしての承認を得ることができました。
採用された素材 - TECASINT ポリイミド
TECASINT 1011の特徴:
- 優れた強度と伸び
- 電気絶縁性
- 高い引張応力
- 低熱伝導性
- 宇宙用途のESA試験で実証された低アウトガス性
TECASINT 1011のその他の用途:
- 絶縁体
- スイッチ部品
- 弁座
- チェーンガイド
- 高温ガラスグリッパー
- ウェアパッド
- 固定シール
- 着装体