今回は、医療用切削加工プラスチック素材の滅菌処理耐性について説明します。
プラスチック製の装置や要素部品であっても、他の医療用器具・装置と同様に、徹底的に滅菌処理を行い、細菌類、ウィルス、藻類、それらの胞子など、生存している全ての微生物を確実に破壊する方法を採る必要があります。
DIN EN 285規格に定められているように、滅菌処理を施す対象の全ての表面を134℃の水蒸気で3分以上暴露させなくてはなりません。
オートクレーブ処理(蒸気滅菌処理)は、あらゆる滅菌処理法の中で最も安全かつ、安価な方法です。
しかしながら、134℃という比較的高温の処理を必要とするため、耐熱性が低く、加水分解しやすい一部のプラスチック素材には、適応されない滅菌方法です。
耐性有り:PEEK、PPSU、ウルテム(PEI)、医療用POM、医療用PPなど
耐性無し:UHMW-PE、PE、一般PP、PC、PET、ナイロンなど
水蒸気を含まない乾燥空気で滅菌する場合は、対象を180℃で30分以上暴露します。
しかし、180℃以上の温度環境でも死滅しない微生物が存在し、滅菌効果に対する不確実性が存在することから、現在ではこの方法を用いることはほとんどありません。
過酸化水素プラズマ滅菌法は、あらゆるプラスチックスに適した方法です。
しかし、その反面でコストが高く、精密装置を必要とします。
反応性の高い水酸基と水酸基ラジカルを利用するため、わずか45℃に加熱し、45〜80分間処理するだけで微生物を全滅させます。
低温で行うことができるので、温度による影響を受けやすい素材に適しています。
また、プラズマは換気により容易に除去でき、金属部品の腐食の心配もありません。
さらに、毒性残留物も発生しないので、換気の為の時間を最小限にすることができます。
ホルムアルデヒドや酸化エチレンなどの殺菌性ガスを利用する滅菌方法は、必ず48〜60℃の温度範囲で行います。
こちらも、比較的低温で行うことのできる滅菌処理であるため、温度による影響を受けやすい素材に適した滅菌方法です。
ホルムアルデヒドは、酸化エチレンと同程度の効果を発揮しますが、酸化エチレンよりも毒性が低いので、殺菌性ガスの換気時間を短縮することが可能です。
両者とも主に使い捨て器具に対して用いられることが多い滅菌方法です。
照射による滅菌処理は、ほぼ全てのプラスチックに適した、滅菌処理に伴う影響が極めて少ない方法です。
この方法では、ガンマ線あるいは高加速電子線のいずれかを利用します。
この処理方法は、コストが高く、種々の機器を使用する必要があることから、主にシリンジなどの使い捨て器具の滅菌処理法として採用されています。
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